1950年代 映画について

「恋の手ほどき」(1958)

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「恋の手ほどき」(1958)

監督

ヴィンセント・ミネリ

キャスト

レスリー・キャロン(ジジ)、モーリス・シュヴァリエ(ホノール・ラシュイユ)、ルイ・ジュールダン(ガストン・ラシュイユ)、ハーミオン・ジンゴールド(マミタ)

 

ドゥミ・モンド(半社会)を生き抜くクルティザン(高級娼婦)になるため、お転婆娘のジジ(レスリー・キャロン)が祖母たちに厳しく育てられる物語。

 

ところでこの映画は変身の映画だ。お転婆娘がクルティザンとして立派に自立する物語とも言える。こういった映画はこの世代にいくつか見られる。例えばこの映画にも色々と関連のある「マイ・フェア・レディ」だとか、「パリの恋人」もそうだといっていい。そしてこの手の映画コスチュームは、映画を駆動させるための立派なメインパーツになる。何故ならば、物語の前半と後半で一番変わるのは彼女たちが身につけるコスチュームであり、このコスチュームチェンジの成功が映画の格式を決める判断材料になるからだ。

 

この映画でコスチュームチェンジをこなしたのはレスリー・キャロン。「巴里のアメリカ人」でもそうだが、僕はこのレスリー・キャロンが好きだ。バレエ上がりの彼女の動きや仕草は、映画が一秒24コマの写真の連続でしかないという基本構造を見事に隠蔽することで、「ドットの連続で出来た記号」ではなく、「画家の一筆がもたらしたキャンバスの滲み」を見事に表出させる。映画でこれができる女優は数えるほどしかいないと思う。

 

セシルビートン卿の衣装とドゥミ・モンドの世界観(成金たちの集まり。とにかく豪華なものを身につけている新興ブルジョワ)の調和も素晴らしいが、今回の映画はレスリー・キャロンが華麗なイブニングを身につけることで取得したあの仕草が見事にコスチュームチェンジを支え、この映画を成功に導いている。

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