Dior「Miss Dior ABSOLUTELY BLOOMING」
トップノート : ベリーアコード
ミドルノート : グラース産ローズアブソリュート、ピオニー
ラストノート : ホワイトムスク
遠い昔の幼日に通っていた近所の駄菓子屋の前で、当時の私の一ヶ月分の給料であった100円玉を巾着袋に忍ばせて、目一杯に甘いものを手に入れる想像を膨らませていた頃のこと、家には時折親戚が持ってくる著しく甘い洋菓子がテーブルに置かれている時があり、駄菓子屋で味わうことのできるジャンキーなカオス感が漂う甘さのフルコースが好きな自分と、テーブルに時折置かれる清楚な甘さに憧れる自分を発見し、そこに大人と子供の境界線があるのではないかと考えていた時期があった。
トップ
このフレグランスのトップノートは、とにかく甘い。ベリーのわずかな酸味を残しながらも、グラース産のローズやピオニーの甘さがそれに加わり、単純な足し算の産物であるようなこの甘さの結晶は、なぜか人を飽きさせない。
ミドル
ミドルに入ってもその甘さは継続し、全体から薄っすらとホワイトムスクが香ることによってこの底抜けの甘さに清潔感をもたらしている。
ラスト
結局という接頭語は適切だろうか。とにかく、このフレグランスはラストノートまで甘さを隠すことなく、それがある種の狂騒的な振る舞いなのだと私たちに認識させることに成功してしまう。
幼稚的大人。職人的な人間による感動的な構造とは正反対の、天才が振るうブリコラージュによる破滅的な構造。このフレグランスには、そんな言葉が似合いすぎるほどに似合っている。