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PENHALIGON’S「Blenheim Bouquet」

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PENHALIGON’S「Blenheim Bouquet」

トップノート : レモン、タイム、ラベンダー、ローズマリー、ユーカリ

ミドルノート : なし

ラストノート : パイン、ムスク、ブラックペッパー

 

ウィストン・チャーチルの香りといったら良いだろうか。それは、シェライ・ピックルズが新たな調香師を雇うはるか前。まだ、ペンハリゴンがペンハリゴンのものだった頃からあった香りであり、男性用フレグランスの名作でもある。

 

トップ

このフレグランスのトップノートを初めて試香したものなら誰しもが驚くであろうそのフルーティーな匂い。これが上流階級の紳士の香りなのかと一瞬言葉を失くしたのは、もう私で何億人目だろうか。そして、幾つの言語で語られてきた紋切り型の印象なのだろうか。ブレムナムブーケですらもうそのリアクションには飽き飽きしているはずで、この色あざやかなフルーツの香りは、芯の通った軽さのある匂いだ。

ミドル

と、そんなことを思ってしまった誰もが驚くのはこのミドルノートだ。シダーウッドやムスクの匂いが現れ、その軽さが急に親しみを帯び始めると、急に質量を持ち始め、紳士面し始めるのだ。いかにも、トップノートは私的悦楽のための匂いであり、このミドルノートこそが上流階級という美しき戦場を生き抜くための顔なのだということを思い知る。

ラスト

宴の最後。去り際の爪痕。紳士は紳士らしく去るべきか。いや、このフレグランスはそんな一筋縄でいくようなものではない。ラストノートではパインの香りが加わることで、大人の中に潜む幼稚性を垣間見ることができる。

 

恐ろしいほどの社交性を、狂おしいほどの多面性を、愛おしいほどの甘さを持ち合わせながら、それを一切隠してしまうこのフレグランスは、我々が知っている「粋」という言葉に近い。そして、同時に持ち合わせたこの幼稚性こそが、このフレグランスの最大の魅力でもある。

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