PENHALIGON’S「Bluebell Eau de toilette」
トップノート : シトラス
ミドルノート : バレリー産リリー、ヒヤシンス、シクラメン、ジャスミンローズ
ラストノート : 楓子香ガルバナム、丁字の蕾クローブ、シナモン
かつて羽生善治は、対局中に集中していくイメージを、海の中に潜っていく感覚と話をしていたのをテレビで見たことがある。そんな天才を引き合いに自分の感覚を話すことほど恥辱はないが、私が何か無意識の中に入り込みたいと思うとき、海の中か森の中をイメージすることがある。
トップ
このブルーベル(春に鈴形の青い花が咲く百合)のトップノートで飛び込んでくるイメージは、雨上がりの深い深い森の中で、様々な花が、木漏れ日のようにその匂いを緑の隙間から香らせている中、その中心にある一本の大木の奥深くにある、想像上のものでしかないほのかな甘みが立ち上がる様子だ。
ミドル
百合やヒヤシンス、シクラメン、ジャスミンローズといったフローラルたちは、ミドルノートでますますその未知の森と一体化していく。それは、限りなく青に近い緑の森で、そこには思考も哲学もなく、ただ匂いがあるだけのような純粋さがある。
ラスト
ラストノートにさしかかるにつれ、シナモンや楓子香などが浮き上がりはじめ、未知の森にスパイシーが色めきたつ。
このフレグランスは、高い集中力の中にあるぶん、その集中力が切れたときの反動が激しい。人によっては、その集中力に耐え切れず、不快に響く怖さも持ち合わせている。