香水について

CHAMEL「GABRIELLE」

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CHAMEL「GABRIELLE」

トップノート : マンダリンオレンジ、ブラックカラント、グレープフルーツ

ミドルノート : チュベローズ、イランイラン、オレンジブロッサム、ジャスミン、ペアー、バレリー産リリー、ピンクペッパー

ラストノート : サンダルウッド、ムスク、カシュメラン、ニオイイリス

 

新しいものを生み出すことは困難だ。いや、この世に創造という言葉が空虚のままはびこり続けるのなら、それはたやすいことなのかもしれない。そんな言葉を打ち込んでおきながら、いささか放棄されたような言葉を吐露することは心苦しい。ただ言っておかなければならないことは、モードの世界ではそんなことは関係ないのだということだ。モードにおいて創造とはオリジナルという言葉に集約されるほど簡単な言葉ではない。10年の歳月を経てリリースされたこの新作フレグランスは、伝統と先端の往復運動でもある。

 

トップ

シャネルがガブリエルであった頃のピュアな香りを謳うフレグランスのトップノートで香るのは、色ではなく、その濃度が視覚的に儚い花々の香りと、メインフェイスたるマンダリンやグレープフルーツといった柑橘系の強さだ。

ミドル

その透き通るようなピュアさに引き込まれていると、ミドルに付香されたチュベローズやジャスミンを仲介し、私たちは愚かにもその奥深くにあるモードの退廃性をほのかに感じとってしまう。おそらく、それは私たちがひた隠しにしたいと思った瞬間から顔を覗かせていたに違いない。さらにそれは、柔らかなイランイランによって、一つの香水としてまとまりを持ち始める

ラスト

ラストノートでは、さりげないサンダルウッドがクリーミーに香り、フレグランスの質感に意味を付与する。

 

残念ながら、シャネルのアイコンになりつつあるクリステン・スチュワートをイメージキャラクターに使ったムービーは決して成功とは言えない。それは、白紙のキャンバスに描かれた大人の絵のごとくに意味を持ち、モードが要求する混沌をなくしてしまったからだと思う。

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