PENHALIGON’S「ENDYMION」
トップノート : ベルガモット、ラベンダー、セージ
ミドルノート : ゼラニウム、スエードアコード
ラストノート : レザー、インセンス、ナツメグ
悲劇の中で眠り続けるエデュミオーン。月の女神に愛され、今も静かに鼓動を響かせている喜劇の人物エデュミオーン。
トップ
トップノートは、ラベンダーやセージに纏われて、清楚に香るベルガモットの香りだ。その清楚さはどこか冷たく我々を拒否し、掴みどころがなく、電気的な官能性(インターネット時代の性。ドット的な非連続的な繋がり。)という恐ろしくモダンな印象を我々に与える。
ミドル
ミドルノートでもその冷徹さに拍車がかかり、スエードやゼラニウムをすらその冷徹さに取り込むあたりが、悲劇の中でしか生きられない喜劇役者の名演技を支えている。
ラスト
ラストノートへ向かって香り始めるのは、インセンスやナツメグといったエスニカルな香りたち。良し悪しに関わらず、物語としての香水と考えたとき、このラストはいかにもトリッキーに感じる。
我々を拒否するほどの清楚さは、その強さが悲劇的に持ち合わせてしまう滑稽さを絶妙な希釈で取り込んでいる。だからこそ、この香水は人を選ぶ。喜劇と悲劇が似合う人がつけるべき香水と言ったら良いだろうか。そんな人は、滅多にいないが。