Atkindons「My Fair Lily」
トップノート : ワイルドカモミール、ルハーブ
ミドルノート : カサブランカリリー
ラストノート : パチョリ、ベチパー
野蛮な機械とでもいうべきか、香水機械論とでも名付けてみるべきか。いや、これはルソーの語った野蛮なのだろうか。だとしたら、そこには同情と名のつくパッションが根を張っているだろうか。あー、我が麗しのリリー。
トップ
トップノートで香るカサブランカリリーとカモミールは、そのあまりにもはっきりとした色としての透明さを主張し、正確に棲み分けられているために隙がなく、少し冷たい印象を与えながらこのフレグランスはたちあらわれる。
ミドル
ミドルノートにさしかかると、我々が思っていた通り、これがルソー的野蛮であることに気づく。そこには同情といった優しさが見え隠れし、このフレグランスと肉体関係を持ってしまった人は、紙切れには記されることのない感情でこのフレグランスと結ばれることになる。
ラスト
ラストノートもその優しい香りは持続し、パチョリやペチパーといったアース系の香りに包まれることでその魅力を最大限に放出している。終わってみれば、最初の冷たさすらも好きになってしまうという、恋に恋するお姫様症候群に誰もが犯されてしまうのだ。
この香りに出会ったとき、奇しくも私と同い年で、ティム・ウォーカーのミューズにもなったリリー・コールを思い出してしまった。リリーという名前がそうさせたのか、その香りが頭の中のリリーに対する知的な幼稚性というイメージを誘発させたからなのかは分からない。ただ一つ言えることは、原因のないこのイメージの連鎖は、恋をするのに十分すぎるほどの力を持っているということだ。ああ、麗しのリリー!