Atkinsons「Love in Idleness」
トップノート : ラズベリー、バイオレットリーブ
ミドルノート : バイオレットフラワー、ニオイイリス、ヘリオトロープ
ラストノート : パチョリ、フロウソウ
日本画の出自が西洋画に依っているように、世の中は二元論の中で語られ続けている(そしてこれからも)。幸せは、不幸があるから幸せなのだ。かつて、落語家の桂枝雀は笑いに関するある理論を打ち立てた。簡単に言えば、彼は笑いを3つのレベルに分けたのだ。その最上位に位置する笑いとは、永遠の笑い。つまり、常態が笑いに包まれた世界ということだ。ここには悲しみも何もない。果たして、そこは本当に笑いの世界なのだろうか。
トップ
このフレグランスのトップノートで香るのは、ラズベリーやバイオレットリーフたち。とにかく、この香りは幸せという感情の最上位に位置する匂いだ。つまり、そこには不幸も毒も何もない、ただただ幸せがあるだけの香りだ。
ミドル
ミドルノートに入り、ニオイイリスやヘリオトロープといったバイオレット系のフローラルが付香する。恋人、恋の花という花言葉をもつこの花たちの意味すらを取り込み、シェイクスピアの世界から飛び出してきたこの媚薬は、止まることを知らずにその世界を拡張し続ける。
ラスト
期待を裏切ることなく、ラストノートまでその狂気を演じ続けたこの香りに、パチョリやフロウソウといったウッディでアース感の漂う香料は大人しく身を潜める。
静かに夜を盗み出したこのフレグランスは、太陽を永遠のものとし、そこに鮮やかに広がるバイオレットの花々を嗅覚に焼き付けてしまう。寝ることのできないこの世界を、あなたは楽しめる覚悟を持っているだろうか。