香水について

Carven 「L’absolu」 

更新日:

Carven 「L’absolu」

トップノート : マンダリン

ミドルノート : アイリス、ジャスミン、チュベローズ、イランイラン

ラストノート : パチョリ、サンダルウッド、アンバー、シトラス

 

調香師 : フランシス・クルジャン

 

シミュラークル的なエロティシズムがあるとすれば、幻影を掴む能力と本質に宿る天性の表象性が見事にマッチした瞬間しにか現れない。だから、僕は森村泰昌よりもシンディー・シャーマンを愛している。あの狂おしいほどのキュートさは、シュミレーショニズムのエロティシズムに直結している。

 

トップ

トップノートで香るマンダリンは、アブソリュ系がそうであるように強い甘さがある。しかし、その中にジャスミンやチュベローズといった透明感が据えられていることで、放埓になりかけた頽廃は一種のまとまりを持つ。

ミドル

ミドルに入り、このフレグランスはイランイラなど甘さにより徐々に濃厚になり始める。しかし、品の良さは変わらず、それが意図して行われた悪態のように我々に響き始めると、それはシュミレーショニズムによる芸術の他にはないのだ。

ラスト

ラストノートで、アンバーやパチョリ、サンダルウッドなどが加わり、より肉感が増す。これは実に巧妙で、模倣された悪徳の中にある本質の肉感が、時間と共にイメージにも嗅覚にも訴えているのだ。

 

単純な二元論には収まりのつかない場所にあるのが良質な芸術なのだとしら、この香りはその必要条件を満たしている。それは複雑なのではなく、単純なエロティシズムなのだ。

 

yuyasaku-blog-pc

yuyasaku-blog-pc

-香水について

Copyright© 寂寥と官能の図像史 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.