「踊るニュウ・ヨーク」(1940)MGM
監督
ノーマン・タウログ
キャスト
フレッド・アステア(ジョニー・ブレッド)、エレノア・パウエル(クレア・ベネット)、ジョージ・マーフィ(キング・ジョー)、フローレンス・ライス(エイミー・ブレイク)、フランク・モーガン(ボブ・ケイシー)
ワーナーのゴールド・ディガーズシリーズに触発されてシリーズ化されたブロードウェイシリーズの第四作目(「ブロードウェイ・メロディ」(1929)、「踊るブロードウェイ」(1935)、「踊る不夜城」(1937))。フレッド・アステアがジンジャー・ロジャースと離れて初めて挑んだ作品で、相手役に選ばれたのは世界一のタップダンサーであるエレノア・パウエル。とにかく、二人の見事なダンスは良い意味でも悪い意味でも予想を裏切らない。兼ねてから一人立ちしたかったアステアが、この映画によって一人で出来る自信を持てたと言うのは真実かどうかわからないし、そんなことはどうでも良い。アステアは誰と一緒だろうが同じだ。美しきマリアージュも混ぜるな危険の官能性もない。これは悪口ではなく、アステがアステアであるのはそういうことなのだ。
アステアにしては珍しく、最初はジョージ・マーフィと男同士のコンビを組んでいる。クレア(エレノア・パウエル)の相棒としてジョニー(フレッド・アステア)をスカウトしにきたボブ(フランク・モーガン)だが、とんだ行き違いでキング(ジョージ・マーフィ)がその相手役に選ばれてしまうというミュージカルコメディー。もちろん、実力はジョニーの方が上で、徐々に周りがそれに気づき始めるというこのアステアの役柄も実にアステアらしい。
この映画には、見事な服の脱着シーンがある。それは、フランク・モーガンがドアの前でフローレンス・ライスを背中から抱きかかえた後、彼女がドアへと入りフランク・モーガンが車へと戻る瞬間、彼は彼女のコートを持ったままその場を去ってしまうというシーケンス。突然露わになったフランク・モーガンの肌の美しさとドレスの露出度の完璧さとライティングの素晴らしさ。そして何より、彼女の表情の実に見事なこと。本当に、このシーンを見ただけでこの映画で損することは一切ないのだ。