1930年代 映画について

「ゴールド・ディガーズ1933」(1933)

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「ゴールド・ディガーズ1933」(1933) ワーナー・ブラザーズ

監督

マルヴィン・ルロイ

キャスト

ウォーレン・ウィリアム(ローレンス)、ジョン・ブロンデル(キャロル・キング)、アリーン・マクホン(トリキシー・ローレイン)、ディック・パウエル(ブラッド・ロバート)、ジンジャー・ロジャース(フェイ・フォーチュン)

 

ワーナー・ブラザーズによる1933年のミュージカル映画。振り付けはお馴染みのバスビー・バークレーで、プレコード時代(彼の絶頂期)の作品である。

 

ともあれバスビー・バークレーといえば万華鏡のようなレヴューシーンで有名であるが、この人の凄さは階段をミュージカル映画の舞台上に持ち込んだことだと個人的には思っている(ミュージカルの舞台上に持ち込んだのはジークフェルド・フォーリーズで有名なフローレンツ・ジークフェルド)。バックステージもののミュージカル映画にとって階段は、ご飯に味噌汁みたいなものだ。画面を縦に移動する女優と衣装の優雅さが、ミュージカル映画には欠かせない。それを潜在的に感じていたバスビー・バークレーは、舞台上にこの階段を持ち込んでしまったのだ。さらに階段に女性たちを配することで、衣装とともに集団性というミュージカル映画に必要不可欠な要素を同時にフィルムに焼き付けてしまった。だから、この映画のレヴューシーンは圧巻の一言だ。

 

そしてもう一つ、プレコード時代のバスビー・バークレーがすごいのは、女性の衣装をどのように剥がすかという官能的で暴力的な美しさを見事に表現してしまったことだろう。シルエットの中で雨に濡れたショーガールたちが一斉にコスチュームチェンジを始め、ローラースケートに乗った赤ちゃんの悪戯によって徐々に女体が露わになる様は、実にエロティックでありながら優雅だ。

 

にしてもこの赤ちゃんのローラースケートが素晴らしく上手い。ミュージカルでローラースケートが使用されたのはおそらくこの映画が最初であり、つまりは光GENJIの元ネタなわけだから、この映画は彼らのデビューする54年前にはすでにこの島国の乙女たちが熱狂するであろう要素を持ち合わせていたのであって、とにかくこの赤ちゃんのスケーティングシーンは不気味に映画を彩っている。

 

ちなみにこの映画は、アメリカの大恐慌の時代のもので(支払い不能になった演出家によってショーが開催されなくなるという映画の冒頭シーンからもわかる)、なんとも暗いナンバーで終わるという珍しいミュージカルでもある。

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