「四十二番街」(1933)ワーナー・ブラザーズ
監督
ロイド・ベーコン
キャスト
ワーナー・バクスター(ジュリアン)、ビーブ・ダニエルズ(ドローシー)、ジョージ・ブレント(パット)、ジンジャー・ロジャース(アニー)、ディック・パウエル(ビリー)
バックステージもののミュージカルが迎えた最初の低迷期以来、久々に大当たりしたこの「四十二番街」。バークレー・ショット、ミュージカル映画のエポックメイキング、この映画にはそんな言葉がいつも添えられている。
この映画の素晴らしさは、何と言っても女性たちの肌の美しさだ。そのコスチュームとライティングによって露わになったビーブ・ダニエルズの胸元の質感は、映画史上に残る「触りたくなるような肌」として全人類の原記憶にこびりついている。そしてこの映画が異常に執着していたダンサーたちの足。それはバックステージもののミュージカルにおける映画の接続詞ともいえる、控え室への階段を映すシーケンスでも強調されていた。劇中に三回登場するこの階段のシーケンスでは、カメラは何人ものダンサーたちが階段を駆け上がっていく足を捉えている。それが本当に素晴らしい。このリズムが全体に行き渡り、レビューシーンの軽やかなダンサーたちのダンスがたまらなく良いのだ。
それと、狂人のごとくダンサーたちを怒鳴りつけ続ける演出家を演じたワーナー・バクスターの発狂具合も個人的には好きだ。このコメディー感一色に落ち切らずに怒り続ける演技をこなせることのできる現代の俳優をイメージしてみたが、僕には誰も思いつかなかった。