ミュージカル映画史

ミュージカル映画史2〜30年までのミュージカル映画〜

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ミュージカル映画史2〜30年までのミュージカル映画〜

その後、30年までにMGMの「ブロードウェイ・メロディ」(29)、パラマウントの「ラヴ・パレイド」(29)、同じくパラマウントの「喝采」(29)、などの傑作ミュージカルが誕生するのだけれど、ここで一度ミュージカルという分野は30年代にかけて衰退していく。なぜか。答えは簡単。それはアメリカが大恐慌に陥ったから。どこかの本でミュージカル映画はアメリカ大恐慌時代に繁栄したと書いてあったのだが、それが全く正しいとは言い難くて、人々がその苦境から救われるために夢の世界への解脱を心の拠り所にしていた的なことが書いてあったのだけれど、正直人って本当にやばいときにミュージカル映画なんて見てる暇なんかないんじゃないかなって思うところもあって。ていうか娯楽って(映画は芸術と娯楽という二元論の中にあるもの)本当の危機的状況の中では有効では無いことは、われわれも2011年にリアルな体験として感じることができたわけで、ミュージカル映画史的に見ても、その後打ち込みする予定ではいるのだが、この分野の何度かの衰退と復活にアメリカの経済的状況や社会情勢がもろに影響してて、状況に影が見え始めるとミュージカル映画は衰退し、陽が差し始めると輝き出すといった本当にわかりやすい分野でもあるのだ。

 

上記した「ブロードウェイ・メロディ」と「ラヴ・パレイド」について言うと、「ブロードウェイ・メロディ」は全編トーキーによる初のミュージカル映画で、「ラヴ・パレイド」は当時その分野ではピカイチの才能を発揮していたエルンスト・ルビッチ監督作。

 

MGMは「ブロードウェイ・メロディ」のアカデミー賞受賞を受けて、バックステージもののミュージカル映画製作に本腰を入れ始める。バックステージものとは、ミュージカル俳優たちのステージ裏で起こる悲喜劇や恋愛劇を物語の主旋律に、レヴューシーンを織り交ぜながら物語展開していく映画のことで、ミュージカル初期のシネミュージカルといったらこの分野のことだと認識していれば良いと思う。ところでこのバックステージもののミュージカル映画には、ご飯に味噌汁的な重要なテクニカルタームが存在している。それはステージ裏から踊り子たちの楽屋へと通ずる階段。ちなみにミュージカルで螺旋階段といったら、まずはフローレンツ・ジークフェルドという人物に行き当たる。彼はアメリカの舞台プロデューサーで、1910年代に美女の踊り子たちを集めたショー「ジークフェルド・フォーリーズ」で名を馳せた人物でもあり、舞台上に巨大な螺旋階段のセットを持ち込み、その階段に大多数の美女たちを配置するというアイデアを実現した人物でもある。螺旋階段を用いることで、ミュージカルにとって重要なタームである「集団性」と、女性たちの衣装の美しさを同時に強調することに成功したジークフェルドはやはりすごい人なんだけれど、彼に関しては後でも述べるように伝記的ミュージカル映画が製作されているのでそちらもどうぞ。

 

さてバックステージものに出てくる階段なのだが、この階段は映画の中で静かな接続詞として機能している。それを説明するためにまず、当時の映画状況に焦点を当てたい。

 

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