「ウィズ」(1978)
監督
シドニー・ルメット
キャスト
ダイアナ・ロス(ドロシー)、マイケル・ジャクソン(カカシ)、レナ・ホーン(グリンダ)
ジュディ・ガーランド主演の「オズの魔法使い」(1939)をアフリカ系アメリカ人のみのキャストで上演されたブロードウェイミュージカル「ザ・ウィズ」を映画化した作品で、「オズの魔法使い」のブラックキャストバージョン。
この映画はカルト的な注目のされ方をしている。ブラックスプロイテーション映画を終焉へと葬った映画だとか、ザ・スプリームスを脱退してソロになり、映画女優としても地位を固めていたわがままなダイアナ・ロスが所属事務所社長に愛人という立場を利用して映画化権を買い取らせて強引に主演した映画だとか、当時33歳だったダイアナ・ロスに合わせて主役のドロシーが少女から24歳の設定に変わってしまった映画だとか、当時のミュージカル映画としては最高額の制作費が使われたにもかかわらず失敗した映画だとか、マイケル・ジャクソンの映画デビュー作だとか、超がつくほどの豪華スタッフによる音楽映画だとか・・・。
いつか「オズの魔法使い」(以下オズ)について打ち込んだときに言ったのだが、あの映画は奥行きをなくすことで新しい映画の空間を創出した映画でもある。それが背景にのっぺらと描かれた遠景だったりしたわけだが、その点でこの映画は意図的にか非意図的にか不意図的にかはわからないが、映画空間論においてはオズとは全く真逆の構造になっている。セットの中に映画があることを発見したオズに対し、ウィズは堂々とニューヨークロケを行なっている。そもそもウィズの始まりで、壁に描かれた絵の中の人々がドロシーの体当たりによって抜け出してくるというシーンがあるのだから、これはのっぺらな映画空間を壊したところからこの映画が始まるのだと宣言しているようなものなのだ。