1950年代 映画について

「くたばれ!ヤンキース」(1955)

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「くたばれ!ヤンキース」(1955)

監督

ジョージ・アボット、スタンリー・ドーネン

キャスト

タブ・ハンター(ジョー・ハーディ)、グウェン・ヴァートン(ローラ)、レイ・ウォルストン(アップルゲイト)

 

 

中年男ジョー・ボイド(ロバート・シェファー)の唯一の楽しみといえば、地元のプロ野球チーム「ワシントン・セネターズ」を応援することだけだった。しかし、いかんせんこのチームは弱い。しかし、ずっと願い続けた宿敵「ヤンキース」を倒す機会は悪魔アップルゲイト(レイ・ウォルストン)の突然の登場によってボイドの手中に舞い込む。アップルゲイトと契約したボイドは、妻にしばらくの別れを告げ、強打者ジョー・ハーディ(タブ・ハンター)として若返り、セネターズへと入団。セネターズはハーディの活躍でヤンキースとの優勝争いを繰り広げる。しかし、妻と一緒にいられない寂しさから、アップルゲイトとの契約を破ってハーディは妻の家(元々は自分の家)へと下宿人として潜り込む。これに怒ったアップルゲイトは、様々な刺客を送ってハーディの邪魔をするのだった・・・

 

20年来の熱狂的「ある球団」ファンである僕は、「この球団」の暗黒期をボイドと同じような気持ちで乗り越えてきた。有望選手はこぞって去っていき、選手やコーチたちの雰囲気は最悪そのものだった。それでも必死に応援し続け、時には自らを嘲笑しながら気持ちを切らさずにやってきた。「その球団」は親会社が代わり、今や大人気球団になってしまった。昔は学校帰りに当日券でふらっと入れたスタジアムにも、宝くじに当たるような確率でしか入れなくなってしまった。それはそれで悲しいが、彼らは立派に優勝争いをしている。悪魔と契約しなかった僕なしでだ。

 

自分のことはさておき、さらにはこの映画が良い悪いということもさておき、あなたがこの映画を好きになるか嫌いになるかは、おそらくハーディを誘惑するアップルゲイトからの刺客ローラ嬢(グヴェン・ヴァードン)を受け入れらるかどうかに大きくよっている。

 

このローラ嬢、元々町一番のウグリーフェイスだったのを、悪魔と契約して永遠の美を手に入れたという設定なのだ。172歳にして男を誘惑する美貌の持ち主。しかし、ローラ嬢演ずるグヴェン・ヴァードンは当時33歳。永遠の美を手に入れたというのになんだか微妙な年齢。「オーバーサーティーが肉体的にも精神的にも、大人の女として熟していくる時期」という社会的コンテクストを持ち込んだファッション雑誌の常套句のごとく主張するのは良いのだが、問題なのは彼女が映画の中で魅了的かどうかとうことなのだ。

 

ローラ嬢が男を誘惑して成功したシーンは一切描かれず(設定上はそれで飯を食ってるのだが、画面に登場していない)、例にもれずハーディの誘惑にも失敗し、そんなハーディに惚れてしまうという哀愁までも描いた点で、グヴェン・ヴァードンは実にはまっている(ちなみに映画はほとんどが原作のブロードウェイミュージカルのオリジナルキャストで、ハーディ役のステファン・ダグラスだけがタブ・ハンターに変わっている。ステファン・ダグラスは舞台当時34歳とかだったので、グヴェン・ヴァードンの方がむしろ年下ではあった)。この映画は、とにかくグヴェン・ヴァードンが愛らしい。

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