香水について

Jo Malone 「Red Rose cologne」

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Jo Malone 「Red Rose cologne」

トップノート : レモン、スミレの葉、スペアミント

ミドルノート : ベルベッドローズ

ラストノート : ハニカム

 

匂いに思考が介入するとどうなるのか。いや、そもそも匂いに思考など介入できるのだろうか。このフレグランスは、巧妙な手口で僕たちに思考することを迫ってくる。しかし、それに気づくことができるのは疑い深いひねくれ者だけかもしれない。それは英語と日本語がどのようにして訳されあったのかという起源を何も考えず、必修科目としてのイングリッシュを学び始めてしまった僕たちには難しいことなのかもしれない。

 

トップ

トップで香るのは7種類がブレンドされたローズなのだが、その種類よりも圧倒的な数に驚かされる。そこは確実にお花畑と言っていい場所で香る匂いなのだが、自分が人間としてそこにいるというよりも、昆虫としてそこにいるといった表現が正しい。つまり、ローズたちが咲き乱れているというよりも、ローズ畑の中にカフカの変身さながら小さいインセクトとなって迷い込んでしまったといった感じだ。

ミドル

しかし、ミドルに入って不意を打たれる。そのローズにスペアミントの香りが付香すると、周りのローズたちが造花であることに気づくのだ。いかにも香水らしい(薬やアルコールを思わせる)香りだ。これは騙されたのではなく、そもそも香水が嘘なのだという肯定的な諦念であって、嘘を嘘で告発するという非常に複雑な香りになっている。

ラスト

ラストにはほんのりと嘘の甘さを残しながら、造花の永遠性を儚くも打ち砕くように香りは姿を消していく。

 

個人的には非常に興味がある香りだ。それは、自分がこのフレグランスを纏った時にどのような魔力を発揮するのかという、永遠に自分では見つけることのできない答えへの羨望という意味での興味である。

 

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