1940年代 映画について

「錨を上げて」(1945)

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錨を上げて(1945)

監督

ジョージ・シドニー

キャスト

ジーン・ケリー(ジェゼフ・ブラディ)、フランク・シナトラ(クラレンス・ドゥーリッツル)、キャスリン・グレイソン(スーザン・アボット)、ホセ・イタルビ(本人役)

 

キャスリン・グレイソン嬢が一張羅に選んだ、巨大な向日葵の絵を堂々と胸元にあしらったシースルーのドレスの頭から離れんこと。さすれば、ジーン・ケリーとフランク・シナトラのセーラー服姿も妙に頭にこびりつくのである。結局、「踊る大紐育」(1949)のへレン・ローズ嬢(衣装デザイナー)と今作のアイリーン・レンツ嬢(衣装デザイナー)ではなるほどこうも違うのかと納得せざるおえないのである。

 

四日間の休暇をもらった二人の水兵、ジョゼフ(ジーン・ケリー)とクレランス(フランク・シナトラ)。ジョセフは口の上手い女ったらしで、クレランスは口下手で奥手な男。休暇中に出会ったスーザン(キャスリン・グレイソン)に一目惚れしたクレランスの為に動くジョセフだったが、いつのまにか自分がスーザンに心惹かれてしまっていた、、、、。

 

アイリーンのデザインは実にMGMと合っていない。なぜならスタジオシステム下のMGMはいかにして所属スター達をキラキラ輝かせるかということに一生懸命だったのに対し、性格がスクリーン上にまんま投影されてしまうという「レイヨグラフ的」才能を持っていたアイリーンの「冷徹さ」が全然親和的ではなく、この双方向に延びた二つの嗜好に折り合いをつけるための妥協点が、その二点を結ぶ線状ではなく、「裸の世界」「エロス」的な線外の彼方に突如現れる(それがキャスリン・グレイソン嬢が一張羅に選んだ、巨大な向日葵の絵を堂々と胸元にあしらったシースルーのドレス)ので、ただの娯楽に収まることなく映画として成功をおさめている。

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