1940年代 映画について

「姉妹と水兵」(1944)

更新日:

「姉妹と水兵」(1944)

監督

リチャード・ソープ

キャスト

ヴァン・ジョンソン(ジョン・ブラウン)、ジューン・アリソン(パッツィ・デヨ)、グロリア・デ・ヘヴン(ジーン・デヨ)

 

小さい頃から歌手として育てられた姉のパッツィ(ジューン・アリソン)と妹のジーン(グロリア・デ・ヘヴン)のデヨ姉妹。「お金持ちと結婚したい」が口癖のジーンを心配していたパッツィだが、ジーンに一目惚れしたという「ある男」から手紙やらプレゼントやらが贈られてくる。その男は、兵士を慰問するためにデヨ姉妹が頻繁に催していたパーティーに来ていた水兵のブラウン(ヴァン・ジョンソン)だった。ジーンを守ろうとしていたパッツィだが、いつの間にかブラウンに恋心を抱いてしまう。

 

デヨ姉妹のデュエットシーンはなぜだか素人じみている。しかし、それがただの「駄作」と思ってしまうことを禁じる危険な香りがそこにあるのもまた否定できない。戦時中の兵隊慰問映画だからか?戦時中の能天気な恋模様への、日本人としての嫉妬心によるものなのか?否。そこに香る危険なスパイスは、「Wink」的な何かに近い。

 

日本人のどれだけの人が、鈴木早智子と相田翔子の上手くない歌声と振り付けに釘付けになっただろうか(結成年が僕と同い年であるという時点で、僕は先天的に彼女たちの大ファンである)。この素人感丸出しのズレのある歌と踊りに、彼女たちの徹底した「死んだ魚の目」の圧力が危険な香りを加えている。

 

この映画の素人感(ズレ)は、なにもデヨ姉妹の歌のシーンだけではない。幼年期のパッツィがママと呼んで出てくる母の衣装の母親らしからぬ「キラキラ」感。音の使い方や、衣装の偽物感(特に水兵の衣装は、「踊る大紐育」(1949))の素晴らしい衣装と比べると明らか)。付け合わせのような「お笑い」。そのどれもが素人感(ズレ)に満ちている。なのに、パッツィとブラウンが向かい合った時の美しいライティングはしっかりと二人の運命を予見させたし、実にテンポ良く物語が進むし、演技も悪くない。この素人感(ズレ)にしっかりとした技術(伝統的なハリウッドのという意味で)がスパイスとなり、見事に「Wink」的な何かをもたらしている。

 

見事といったのは、僕が「Wink」の大ファンであるという潜在的事実が自明的に告白しているように、この映画に釘付けになったからである。

 

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