1930年代 映画について

「踊らん哉」(1937)

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「踊らん哉」(1937)RKO

監督

マーク・サンドリッチ

キャスト

フレッド・アステア(ペトロフ/ピーター・ピーターズ)、ジンジャー・ロジャース(リンダ・キーン)、エドワード・エヴェレット・ホートン(ジェフリー・ベアード)

 

フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースのコンビ7作目となったこの作品。「Shall We Dance」という言葉に、役所広司でなくリチャード・ギアでもなくフレッド・アステアを思い浮かべる人はどれだけいるだろうか(原題は「Shall We Dance」)。いきなりの私的な言及に許可書が発行されるならば言わせていただきたのだが、アステアの映画の中ではかなり好きな映画だ。ガーシュウィン兄弟の曲も良い!

 

この映画でアステアは、恋心を抱く片思いの相手リンダ(ジンジャー・ロジャース)を追い回すバレエ・ダンサー役を演じているのだが、この役がほどほどに頼りなく、ほどほどに抜けている。それがアステアのシックさと相まって実に良いキャラクターに仕上がっている。これ以上間抜けな役をアステアにやらせても憎たらしくなり、あまりにも完璧な役をやらせてもまた憎らしくなってしまう(めちゃめちゃ個人的な意見だが)。

 

この映画にはミュージカル映画に必要な異世界へのトリガーが十二分に配置されている。工場(同じコスチュームで同じ動きをする集団という意味で、工場はミュージカル映画に欠かせないステージなのだ)や、船のデッキの上で犬を散歩させる人間たちの奇妙な同調感や、ローラースケートで疾走するアステアとロジャース。とにかくこの映画は全く期待を裏切らない。

 

仕方なしにデートするためお揃いの丸淵のサングラスをつけてボートに乗るシーンのアステアとロジャースの見事なカメラへの収まり方にはハッとさせられるし、夜霧の中でコサージュを持ったアステアがロジャースに歌いかけ、彼女が徐々にアステアを意識し始めるシーンは美し過ぎて時間が過ぎることを惜しく思ってしまうほどだ。

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