Serge Lutens「Féminité du bois」
トップノート : シダーウッド、オレンジブロッサム、ピーチ、ハニー、プラム、ビーワックス
ミドル・ラストノート : シダーウッド、クローヴ、カルダモン、シナモン
物語が常に拉致されていくことは、決してネガティブなことではない。むしろ、その抜きとられた意味がどことなく浮遊し続けて、未来の私たちへと届けられる可能性を秘め続けていることに感動しなくてはならない。そしてこのフレグランスは、女性という言葉の物語を拉致してしまった。
トップ
女性用フレグランスでありながら、トップでいきなり強烈なウッディーの香りがする、それはフランスの知性であり哲学でもあるセルジュルタンスらしい女性の解釈であり、香り立つシダーウッドは日本の杉の香りがするためどこか親しみやすく、転覆したこの女性性に惹き込まれるのにそう時間はかからない。
ミドル・ラスト
そして、最近の香水にしては珍しいダブルノートの構造をとっており、ミドルとラストで香るのはシダーウッドやシナモンといったウッディーでスパイシーな香りなのだが、この香水につけられた名前、「木の香りの中にある女性的な一面」という姿が、性としての女とは反義語になる「オンナ」としてその姿を現した時、このフレグランスは見事に完成される。
1992年に登場し、未だに廃盤にならず資生堂が販売を続けているこのフレグランス。いくつかある私の後悔の中の一つが、2009年にこのフレグランスが資生堂ではなくセルジュルタンスプロデュースのボトルで発売したのを買えなかったことだ。