「黄金の雨」(1936)コロンビア
監督
ノーマン・Z・マクロード
キャスト
ビング・クロスビー(ラリー)、マッジ・エヴァンス(スーザン)、パスティ(エディス・フェロウズ)
大恐慌のアメリカ時代を描いたミュージカル映画。と言っても歌劇はほとんど登場しない。刑務所で知り合った殺人犯から、殺した遺族の娘であるパスティ(エディス・フェロウズ)とその祖父への手紙を託されたラリー(ビング・クロスビー)が、彼女たちと共に放浪する物語。ラリーが、雷に怯えるパスティに歌いかけるシーケンスと、カフェの経営に乗り出したラリーが友人の黒人トランペッターを呼び、彼の演奏をバックに好意を寄せるスーザンに歌いながら近づくシーケンスが、この映画の歌劇だ。
明確に何がミュージカル映画で何がミュージカル映画でないかという線引きはないが、僕の基準でいえばこの映画は非常にグレーゾーンに近い黒だ。もちろんそれが映画の良し悪しを決める物差しになることはない。衣装への言及的なシーンがなく、歌劇が活劇を駆動させることもなかったので、ミュージカル映画というよりはドラマとして観る心構えをお持ちの方が良いでしょうと言いたいだけだ(ミュージカル映画は心構えを間違えるととんでもないことになる。原作を読んで心躍らせた観客が、「ロンググッドバイ」(1973)を観た後に必ず受ける自責の念を避けるためにもこれは必要だ)。
映画は特に素晴らしいということもないが、金に困ったビング・クロスビーが軽業師になり、ローラーコースターで観客に突っ込むシーンは痛快だ。