1920年代 映画について

「ラヴ・パレード」(1929)

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「ラヴ・パレード」(1929)パラマウント 

監督

エルンスト・ルビッチ

キャスト

モーリス・シュヴァリエ(アルフレッド・ルナール伯爵)、ジャネット・マクドナルド(ルイーズ女王)、ルピノ・レイン(ジャック)

 

エルンスト・ルビッチといえば、僕は「結婚哲学」(1924)という映画がとても好きだ。ラストのフローレンス・ヴィダーのアップのショットは、映画史上に残るぐらいに美しく、ルビッチの演出が冴えていた。といわけで(どういうわけか)、この映画はルビッチ初のトーキー映画で、モーリス・シュヴァリエとジャネット・マクドナルドの二人と組んだ第1作目。ちなみにシュヴァリエとマクドナルドのコンビで言えば、「今晩は愛して頂戴ナ」(1932)が一番好きだ。

架空の国であるシルヴァニアの女王であるルイーズ(ジャネット・マクドナルド)と、パリに派遣されていたけれど女関係の問題を起こして国に帰ってきたアルフレッド(モーリス・シュヴァリエ)の恋物語。

 

ミュージカル映画史的に言えば、ストーリーの中で役者たちが歌劇を繰り広げるという形式のエポックメイキング的存在。1927年に「ジャズシンガー」という映画が上映されたその二年後の作品のため、ようやく声を持ちはじめた映画のミュージカルの扱いかたが整いはじめた時期にあたる(この映画で言えば、演者たちの感情と表情に合わせて音楽の調子が変わるあたりが非常に無声時代の名残を残している)。

衣装はトラヴィス・バントン。バントンといえばディードリッヒだが、二人が出会うのがこの映画の直後であるから、いわばバントンの才能が開花する前の映画になるわけだが、得意の毛皮使いはやはり圧巻だ。毛皮は、豪華絢爛にスクリーンを彩るだけでなく、大量の宝石類の擦過音というトーキー初期には致命的な問題をもクリアする重要アイテムなわけだが、バントンはその使い方がとにかく上手い。スタンバーグとディードリッヒに出会ってその才能は開花し、上海特急のあの黒の毛皮のコートに当たる光は完璧だった。この映画でも、マクドナルドが毛皮のコートなどを着用しているが、それよりも寝間着姿のマクドナルドが良い。胸元に当たる光と肌の艶かしさには、思わず唾を飲み込んでしまうほどだ。

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