Jo Malone 「Oud & Bergamot Cologne Intense」
トップノート : ベルガモット
ミドルノート : シダーウッド
ラストノート : ウードウッド
調香師 : クリスティン・ナゲール
「優雅」や「神秘」という言葉に強さは似合わない。いや、ひた隠しにされたその強さを見せないようにしているその姿を見つける楽しみが僕たちにはあるのだ。それが僕らの窃視というエロスなのだと思う。Jo Maloneの店頭に置かれたこの高級感あふれる黒のボトルには、薄く輝く「Oud」の文字が刻まれており、この香りのダイヤモンドでもある「Oud」にはやはり強さは似合わない。そして、その清楚かつ威風堂々としたボトルデザインは、Jo Malone の爽やかなディスプレイの中では一際目立ち、重ね付けなどもってのほかだ。
トップ
トップは静かに始まる。シトラスの香りをさせるベルガモットは、派手に自らを主張せず、静かでお淑やかな女を演じている。それは嫁ぎ先の礼儀を重んじる淑女といった趣だ。
ミドル
ミドルに入り、シダーウッドやウードが静かな爽やかさに神秘性をもたらす。それは、低く香る薬湯の香りがもたらしたエロスだ。地位や名声をどれだけ纏ったとしても、そのレヴィナス的エロスは窃視の格好の的なのだ。
ラスト
ラストノートはミドルの香りを残しながら、たち消えた姿を香りという目視できぬ形跡としてインデックスされ、我々の儚い記憶を静かに刺激する。
ウードウッドといえばトムフォードのフレグランスとして知られたところだが、若輩者である僕はその香りをまだ知らない。しかし、あまりにも情報に満ちた現代社会のデータベース化により、僕は知らない香りを知っている気になっている。これに警鐘を鳴らそうとは思わないが、僕がこのサイトでやっていることはその言葉たちへの反抗でもあるのだ。