1930年代 映画について

「空中レヴュー時代」(1933)

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「空中レヴュー時代」(1933)RKO

監督

ソーントン・フリーランド

キャスト

ドロレス・デル・リオ(ベリニャ)、ジーン・レイモンド(ロジャー・ボンド)、ラウル・ロウリン(ジュリオ)、ジンジャー・ロジャース(ハニー・ハレ)、フレッド・アステア(フレッド・アイレス)

 

名もない才能の持ち主が、圧倒的な立ち居振る舞いで映画を支配してしまうことが稀にある。演技が上手いからといってこの種の人間になることはできない。なぜなら、彼/彼女らは何もしなくてもいいからだ。その存在感にカメラが向けられる。それだけでいいのだ。あいにく僕たちはそんな映画を目撃したとき、「端役が主役を食った映画」なんていう紋切り型のセリフしか用意していない。

 

このミュージカル映画の主旋律として流れている恋愛物語(ジーン・レイモンドとドロレス・デル・リオ)は、そんなに真剣に観る程のものではない。それより何より、この映画にはフレッド・アステアが端役で出演しているのだ。その出自から、「端役が主役を食った映画」になることを約束された映画でもあるこの作品は(元々アステアが主演で撮られるはずだったが、この映画への出演をオファーしたRKOの副社長セルズニックがMGMへと移籍したため、ジーン・レイモンドが主役として製作された。ちなみにセルズニックはこのことを悪く思い、同年のMGM作品である「ダンシング・レディ」(1933)にもアステアを出演させている。つまりこの年、アステアは二つの制作会社で映画に出演しているのだ。今風にいえば、同一シーズンに巨人と阪神のユニフォームを着てプレーした特異な例でもある)、アステアとジンジャー・ロジャースのコンビがブレイクする前夜の作品でもあり、ということはつまり、世界大恐慌が急速に回復していく前夜でもある。とにかく、この映画はこの二人のダンスを観ればそれで良い(cariocaなんか素晴らしい)。

 

そもそも空中レヴューって何かっていうと、飛行機(もちろん戦闘機)の機体の上に乗ったダンスガールたちが華麗に踊るというレヴューシーンのことなのだが、「いや、飛んでる機体の上でダンスしたって物理的に誰がその踊りを見れるのだろう?」とか思っちゃったらあなたはミュージカル映画への耐性がないと思われるので、ご注意を。

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